そもそもトラウマとは?
■■■ そもそも「トラウマ」とは何なのでしょう? ■■■
「トラウマ」とは心の傷のことです。
心理学用語としては「心的外傷」または「精神的外傷」など、かたい言葉で訳されていますが…。
意味としては、心理的・精神的に何らかの大きな打撃を受けて、
さらにその後、その影響が心に(身体にも)長く残るような体験のことです。
身体に受けたひどい傷が後遺症となるのと同じように、
過去の心のショックがその後、たとえ忘れ去られたように見えても
心と身体に障害をもたらすような状態をいいます。
最新のトラウマの理解では、
トラウマになる出来事は、一般的に理解されているよりも
日常に溢れていることがわかってきています。
誰でも日常的にトラウマを抱える可能性があります。
例えば、育った家庭での両親の不仲や離婚、親からの過干渉、
職場でのストレス、ハラスメント、人間関係、超過労働、異動、降格etc.も、
人によってトラウマ化する可能性は充分にあります。
トラウマは特別なことではありません。
しかしトラウマを侮ってはなりません。
■■■ ストレスとトラウマの関係 ■■■
私たちの生活は、日常的にストレスにさらされています。
慢性的なストレスは無視できないファクターです。
命の危機というほどの出来事でなくても、慢性的なストレスにさらされると
自律神経性のバランスが崩れやすくなります。
また過去に心の傷になるような出来事を経験した人が
後にストレスにさらされると、些細なことに過剰反応するように
なったり、落ち込んだり、身体に症状が出たりすることがあります。
たとえば、おにぎりを作る時、手に塩をつけますね。
手に傷がなければ塩が手にしみることはありませんが、
傷ができたところに塩がついたらすごく痛いですよね。
そう考えてもらうとイメージが湧きやすいでしょうか。
■■■ トラウマ的な出来事、ストレスを感じる出来事 ■■■
以下のようなことが、個人的な安全を脅かすトラウマとなり得る出来事です。
必ずしもトラウマとなるとは限りませんが、原因不明の身体症状や心の問題が
このような出来事の背景に潜んでいることもあるので、過小評価しないことが大切です。
- 事故、スポーツ事故、落下、転倒
- 手術、医療的介入、長期の病気、高熱、
- 戦争、紛争、拷問、テロ
- 自然災害、火事、洪水、地震、津波
- 海、川、プール・浴室などで溺れた、窒息
- 暴力行為、レイプ、性被害
- 職場でのストレス、ハラスメント、人間関係、超過労働、異動、昇進、降格
- 夫婦関係の不仲、不倫、離婚、再婚
- 家族や自分の病気、介護
- 家族、恋人、友人やペットの死、喪失
- 学校でのストレス、いじめ、教師からの暴力(身体的、精神的)、転校
- 引越し、移転
- 幼少期の身体的虐待、性被害、言葉での虐待、ネグレクト、育児放棄、裏切り
- 自分が母親としての出産期・周産期トラウマ、流産、不妊治療
- 自分自身が生まれた時のバーストラウマ、母親のストレス、出産期・周産期トラウマ
- 両親の不仲、ケンカ、DV、離婚
- 親からの過干渉、抑圧、厳しい躾け、過度な期待、親孝行のプレッシャー
- ジェンダーアイデンティティに関する悩み
- 子育て、教育、進学、病気、発達障害、身身体障害、引きこもり
- 宗教や信念の強要、強制
- 目撃者としての恐怖体験
トラウマ、人間であればだれでも抱える可能性のあるものです。
他人からの判断で「そんなこと気にしなくてもいいじゃない?」
「あなたの心が弱いからだよ」と言われるようなことでも、
トラウマになることが沢山あるのです。
そのように言われることが、かえってトラウマの上塗りになることもたくさんあります。
「こんなことで悩んだりしている自分が弱いんだ」
などと自分を責めないでください。
トラウマになる出来事は『それが恐怖で脅威だった』
というあなただけの主観的な体験なのです。
また、トラウマになる可能性のある状況は、
意識的なコントロールができるわけではありません。
むしろ無意識(皮質下)レベルの、身体の防衛反応なのです。
かつて、戦場から帰還した屈強な戦士たちの多くが
深刻なトラウマ症状に苦しんだことを考えれば、それは明らかなことです。
そして実は元々PTSDというトラウマ反応は、
彼ら帰還兵たちの症状に対する治療の取り組みが
発端となって急速に研究が進んできた分野です。
★注意として、PTSDに属さなければトラウマでないと
誤解されがちですが、そんなことはありません。
何度も言いますが、その人にとって恐怖で衝撃的なことであればそれはトラウマとなりえるのです。
◆◆◆ PTSD(心的外傷後ストレス障害) ◆◆◆
PTSDとは、ポストトラウマティック・ストレス・ディスオーダーposttraumatic stress disorder の略で、
トラウマとなるようなストレスの後に発症する障害という意味です。
PTSDは、衝撃体験の後、心や身体の痛みが強く深く長く続きます。
医学的にPTSDと診断されるトラウマには、次のような主な症状(PTSD中核三症状)があります。
下記のような症状が1ヵ月以上持続し、それにより顕著な苦痛や、
社会生活や日常生活の機能に支障をきたしている場合、PTSDと診断されます。
●再 体 験
考えたくない、思い出したくないと思っていても、その時の恐怖や不安の感情が、
突然襲って来ることがあります。過去の出来事なのに、今まさに体験しているように
感じます(フラッシュバック)。悪夢を見ることもあります。
●回 避 ・まひ
出来事に関して思い出したり考えたりすることを極力避けようしたり、
思い出させる人物、事物、状況や会話を回避します。
あるいは、頭が真っ白になったり、悲しめなかったり、現実感をなくす人もいます。
●過 覚 醒
小さなことに必要以上に敏感になってしまいます。
いつも、ビクビクしたり、イライラしたりしがちです。
集中困難、睡眠障害がみられます。
複雑性PTSD
子どもの頃のトラウマ体験は成長に影響します。
トラウマを経験した時期が早ければ早いほど、心に残る傷が大きくなります。
防衛的もしくは攻撃的になって外傷体験に適応しようとしたり、
まわりの環境から自分を切り離したり、
羞恥心や罪悪感を抱き、自信や自己肯定感を持てずに成長する子や成人もいます。
世界保健機関 (WHO) が発行する疾病及び関連保健問題の国際統計分類 (ICD) では、
2018年の改定による第11版において初めて、診断基準として記載が行われました。
ICD-11における複雑性PTSDの診断基準(そのドラフト)は、上記PTSDの中核三症状に加えて、
●否定的自己認知
自分は取るに足らない、打ち負かされた、または価値がないという持続的な思い込み。これには、ストレス因に関する深く広汎な恥辱感、罪責感、または挫折感が伴う。
●感情の制御困難
ささいなストレス因への情動的反応性の亢進、暴力的 な(情動と行動面の)爆発、
無謀なまたは自己破壊的な行動、ストレス下での解離性症状、情動の麻痺、
特に楽しみやポジティブな情動を体験できないこと。
●対人関係上の困難
人間関係を維持し、他の人を親密に感じることへの持続的な困難。
人との関わりや対人交流の場を常に避ける、軽蔑する、
またはほとんど関心を示さない。
あるいは、時として非常に親密な対人関係を持つこともあるが、
それを維持するのは困難である。
といった症状が、認められることとされています。
このような症状は、臨床にたずさわって成育歴・家族歴等を聴いていれば
見立てられるので、診断基準がこれまで無かったことの方が不思議なくらいです。
それというのも、実際にはうつ、不安、パニック、解離、嗜癖、自傷行為、摂食障害などもよく起こるので、
それら個々に対して病名が付けられることが多いのが現状だからかもしれません。
また、トラウマが固定化しパーソナリティ障害の形をとることもあります。
カウンセリングルーム・フォレスティエでは
トラウマの問題があると思われる方を対象に、
EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessingの略)
BSP(Blain Spotting)をご提供いたします。
詳しくは、カウンセリング&セラピー メニューをご覧ください。